2020-07-12

anond:20200712130405

「それ、売ってくれない?」

その夜、雑居ビルの地下にある、小さなバーに居た。

週に1回くらい、ここでくだらない時間を過ごしてから、部屋に戻る。

彼は、職業を「占い師」と言っていた。

彼のグチは、いつも常連客のことだ。「常連になってるバアァどもを相手にしてあげるのが、もう面倒くさい」、と。

鞄の中で雑に温めてあげていた、手持ちのトルマリンペンダントサンプル3個を、とりあえずその場で売ってみた。15000円の現金収入

彼は、それを「常連」に「私からのお守りです、大切に温めて下さい。あなただけの特別ですよ。」などと言いくるめ、適当に売りつけるのだそうな。

カリスマ性というのは、どうもこういうときに便利らしい。

6000円の飲み代を払い、狭い階段から地上に出て、部屋に戻る。

社長の言う、ウィルス匂いがする。ここも波動とやらが低いところなのか。

明日は朝から会議で、ソリティアの進捗を聞き流し、トルマリンペンダントの売り上げ報告をしなければならない。気が重たい。

記事への反応 -
  • ウイルス臭いから窓を開けろと社長に言われて、あわてて窓を開けると、雨混じりの湿った空気が事務所に入ってきた。窓の外は隣の雑居ビルの薄汚れた壁しか見えない。 いままで気づ...

    • 「それ、売ってくれない?」 その夜、雑居ビルの地下にある、小さなバーに居た。 週に1回くらい、ここでくだらない時間を過ごしてから、部屋に帰っている。 彼は、職業を「占い師...

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