○は死んだ、ということにした。別に本当に死んだことにして人に話すとかじゃなくて、自分の中で○の葬式をあげた。それだけだ。
○は死んだから、自分は過去の暴力に怯えなくていい。何を言われても死んだ人は自分の世界には干渉できない。若くして死んで可哀想だ。○がほんの少し機嫌がいいときの都合のいい思い出をすくいみて、あぁ本当はいい人だったかもしれないなんて甘いことを考えられる。連絡先を知らなくてもおかしくない、死んだ人はスマホを契約できないので。
死んだということにしてよかった。死んで欲しくてたまらなくて辛かったのでお葬式だけあげた。解放されたような気分だ。いいお葬式だった。誰も泣いていなかった。
自分にとっては極悪人でも、きっと○の死を悲しむ人間はいるので、せめて自分の中のお葬式は誰も悲しまないことにした。想像だからそれぐらい許されたい。