久々に会った彼は、少しやつれていた。歳をお互い取ったせいか、仕事が忙しいせいか。どことなく肌の感じや、ちらほら見える白髪、笑うと目尻にシワが寄るようになったのが、年齢を感じさせた。歳は一つしか変わらない。私も同じく見えていることだろう。
私は彼が好きだった。口に出すことはなかったけど、2人で話すときは、好きな異性と話す喜びでいっぱいだった。みんなで何度も遊びに行った。海でビキニを着て、カラオケでアイドルの歌歌って。
私達は仕事を教わる立場から教える立場へ変わり、聞くより聞かれることが多いポジションになった。そして再会し、一緒に仕事をすることになった。
話していると、彼から、懐かしい匂いがした。柔軟剤じゃない、石鹸でもない、近付くとほのかに香る、香水のような嗅いだことのない素敵な香り。もっと近くで香りを確かめたくなる、もっと一緒にいたいと思う、若かった私を思い出した。
彼の薬指には、知らない人との指輪がはめられていた。