父は褒めない人だった。
非常に印象的なのが、全校生徒から1人だけ選ばれて発表することになり、熱心な先生が「出来がいいからどうしても見にきてあげて」と父を誘ってくれて見に来たときのこと。終わって合流した時、第一声は「早口過ぎたね」だった。その道に進むべきだと先生が父を説得してくれたが否定するばかりだった。
一事が万事この調子で、褒められたことがない。欠点しか言わない。
特に文句が言いたいわけではない。学校では成績や受験の結果として自分の能力がはっきり評価される。父がどんなに貶しても自分の評価はわかるし、結局その道に進んでそれなりに成果も出している。それに、父はとても誠実で信頼できる人だというのもわかっている。
褒めよう。思ったことを口にだそう。
父もきっと良く思っていなかったわけではなかったのだなあ。