アルジャーノンに花束を、の書評で「エレベーターのようにぐんぐんと打ち上がって、頂点に達して真っ直ぐに落ちていくような、勢いのある話だった」って言うのがあって好きだったんだけど
かつては拳を振り上げ熱狂したもの、熱狂した同志、熱狂した場所があったのに、今は誰もいない。踏み潰された草地と、忘れ去られた立て看板とがあるだけ。まるで、何にも残らなかった戦争みたいで好き。
今日は特にいい。そこそこ文の意味も通るし(そのせいでちょっかいかけられてるけど)、何より失われたものの輝きを上手く描けている。警察や教授など、明確な抗えぬ悪者が出てくるのも好きよ。被曝跡地で燃え尽きた家の瓦礫の陰に、溶けて輝くガラス瓶の埃を拭うような美しさがあるわ。
たまに正常側に針が振れてる時の字下げっちの文章に垣間見える理路整然としたもののも、かつての栄誉の面影が見えるからいいよね。