欧州大戦後世界各国がそうであるように、日本もまた新興の機運に際会し、何者かをつかもうとして焦燥し、ぐるぐる舞いをしてきた。なお世界のどよめきにつれて動き、世界とともに悩むことは、時勢としてやむを得ないだろう。けれども、もうまねごとの時代は過ぎた。(中略)
まねごとの慌ただしさ、落ち着きのない悩ましい日本の現状、こうした社会相はいったい何によるものかといえば、人間の持ち前の物質意識と精神意識より起こる。二つの欲のばっこするに乗じて、この二欲を正しく制御すべき肝腎な心の修行がたりないからである。
すべてにおいて、過渡時代の悩みにある日本国民は、何をもって明日に対する心としているのであろうか。我々は常に正しき、建設的な理想をもたねばならぬ。そしてどんな悩みの中にあっても、その理想への道を一歩ずつたりとも貫き進む覚悟がなければならない。その理想を求めよ。精神的に空虚なその日暮らしほど恐ろしいものはないのである。