明里との再会を果たした貴樹を待ちうけていたのは、種子島への転校だった。
宇宙を見上げる人々の心に住み着いた夢と野心。
潮の香りとロケット燃料の匂いとが混ざり合う南海の島。
ちゃちな信義とちっぽけな優しさが、悲しみの傷口を広げてゆく。
そう、気づかぬうちにじわじわと。
次回「コスモナウト」
波の向こうから少女は微笑む。
何もかもが、摩天楼に消えた
抱き続けた想いも、芽生え欠けた恋も
全てが振り出しに戻った
貴樹は死んだ魂を疲れた身体に包んで、蜃気楼の街をさ迷う
愛を夢見たのが幻想なのか
心の渇きが幻想を生むのか
想いの果てに愛を見るのが幻想に過ぎないことは、誰もが知っている
では、線路の向こうにいるのは誰だ
次回「秒速五センチメートル」
その時、貴樹は振り向いた
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