30を過ぎて、体を鍛えることにはまった。
10代・20代は運動なんて大嫌いだった。
ジムに入会して半年も経つと、ずいぶん体つきがかっこよくなってくる。
今まで運動していなかった分、やればやるだけ筋肉が増えて脂肪が減っていく。
すると自分の変化が楽しくなって、またジムに行くという好循環。
このあたりで、だいぶ周囲の反応も変わってくる。
おおむね好意的なものだったが、中には意外なものもあった。
「お前、ツマラナイやつになったな」
仲が良かった友人A,Bにこう言われた。
いや、ちょっと待ってほしい。
半年前の自分は、特にこれといった趣味もなく、休日は昼過ぎまで寝てるようなやつだった。
ネットして、気づいたら1日が終わるようなやつだった。
自分に自信がない。体力もない。「疲れた」が口癖のやつだった。
そんな自分に嫌気がさして、ジムに入会して運動するようになった。
半年後、自分に自信がついたおかげでずいぶんと社交的になり、友人も多くできた。
フルマラソンに挑戦したり、新たな趣味ができたおかげで、休日を寝て過ごすこともなくなった。
半年前の自分のほうが、よっぽどツマラナイやつなんじゃないのか。
A,Bに反論しようとして、はたと気が付く。
いや、そういうことではないのか。
ジムに行くのを理由に飲みの誘いを断ったり、新しい友人たちと行った沖縄旅行の話を聞かされるのが面白くないのか。
ツマラナイやつになってよかったと思う。
その日以降、彼らと飲みに行くことはなくなってしまったけれど。