僕が高校生だったとき、放課後に予備校に向かう電車の中で見た世にも恐ろしい光景が脳裏に焼き付いている。ボサボサの髪はハゲかかっていて小汚い身なりをした小太りのオッサンがマンガを読んでいた。マンガを読みながらニヤニヤしていて、読んでいる本人はさぞかし楽しいのだろうが目に入ったこちらとしてはとても不快だった。マンガのタイトルはコミック百合姫だったと思う。当時は人間は行き着くところまで壊れると女同士の恋愛もどきに自己を欲望を投影する醜いオッサンになるのだろうな、くらいに軽く思っていた。
いま、僕の頭皮は若干禿げ上がってきた。身なりを整える精神的な金銭的な余裕もない。ひょっとして、あのとき見たオッサンは未来から来た僕だったんだじゃないだろうか。あんなオッサンにはなりたくないなという、そのままの姿になりつつある自分を思うとなんだか悲しくなる。