森のなかの道を散策していると、沼地に出てしまった。沼は凍っていて、氷の真ん中でひとりの老人が椅子にうずくまって震えていた。
「大丈夫ですか」
私は老人にコートをかけてやる。
「今日はさっぱり釣れんのじゃ。炎上もせんし、灼炎鳥(ホッテントリ)も狩れんから寒くてかなわん」
よく見ると、老人の手元には釣り竿がしっかりと握られていて、糸の先は氷の層の先に続いているのだった。
「そりゃあ釣れませんよ。今日は祝日ですから。祝日の増田は競争率が高いので、気合を入れて記事を書いてもなかなか人気エントリーには入りませんよ」
「若いもんが知った風な口を」
老人は寒さで真っ赤になった鼻をフンと鳴らした。