電車内は席は全て埋まっていて僕はその席の前に立った。
しばらくして多くの人が降りる駅で、幾つかの席が空いた。
空いた席に座ろうとしたときに、ドア付近に立っていた彼女と目があった。
猫っぽい目。ショートで少しパーマがかかった茶髪。スキニーパンツにオニツカタイガーのスニーカー。白いキャンバス地にシンプルなデザインのトートバッグ。
目が合っていたのは一秒にも満たない時間で、その一瞬で僕は何も考えられなくなった。
僕は一番端の席に座り、彼女は斜め前に立っていた。
電車を降りるときに、もう一度だけちらりと彼女を見て僕は違う電車に乗り込んだ。
その電車のなかでうとうとしていると、あれは夢だったのかもしれないなと思った。