2019-07-12

走れタヌキックマスター

タヌキチは激怒した。

必ず、かの邪智暴虐の王、カポエイライオンオーを除かなければならぬと決意した。

タヌキチには政治がわからぬ。

けれども、邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。


タヌキチは駆け出した。

必ず、かの酒池肉林王宮ピィアールへと向かわねばならぬと決心した。

タヌキチには道順がわからぬ。

けれども、タヌキチが道を尋ねた人々は、人一倍に親切であった。


タヌキチは苦悩した。

必ず、かの悪逆無道の王を倒すと決意したのに。

タヌキチは、門番カタハライタチノスケにすらかなわぬ。

けれども、タヌキチは、強くなることには、人一倍貪欲であった。


タヌキチは奔走した。

必ず、かの深山幽谷に住む伝説武術家に教えを請わねばならぬと思案した。

タヌキチは、その武術家サイキックマスターの居場所もわからぬ。

けれども、王を倒すためには、人一倍修行必要だった。


タヌキチは修行した。

必ず、艱難辛苦を耐えて強くならねばならぬと我慢した。

タヌキチの全身は、タヌキ血に塗れ、もはや時間感覚もわからぬ。

けれども、師匠指導に対しては、人一倍努力したのであった。


タヌキチは疾走した。

まずは残忍酷薄の部下を倒さねばならぬと疾駆した。

強くなったタヌキチには、メスイタチ門番をはじめ、部下は誰もかなわぬ。

けれども、王は、人一倍に強いと言われていた。


タヌキチは対峙した。

必ずや、この剛力無双の王を倒さねばならぬと改めて決意した。

タヌキチは、修行の際、何度サイキックマスターに蹴られたかからぬ。

王が蹴れども蹴れども、その攻撃は、人一倍に敏捷なタヌキチには当たらなかった。


タヌキチは退治した。

乾坤一擲の蹴りが当たり、もはや王は立ち上がらぬと確信した。

王は二度と民衆を虐げられぬ。

けれども、人一倍に繊細なタヌキチの心中には、一抹の不安が残った。


タヌキチは失踪した。

以暴易暴のタヌキチが、過度に賞賛されてはならぬと熟慮したのだ。

人々は、タヌキチの名前も居場所もわからぬ。

けれども、その姿と蹴りの力強さ、美しさは、人一倍記憶に残った。


人々は、名も知らぬ英雄をこう呼んだ。

「タヌキックマスター」と。

  • サイキックマスターはやっぱりサイなんだろうか…

  • カタハライタチノスケは初めてうまいなと思ったよ

  • 王宮ピィアールで初めて笑った

    • 例のネーミング増田の投稿で見たことがない名前ばかり面白いのは残酷だなって

      • カタハラ・イタチノスケはネーミング増田の考案だろ。

      • これがネーミング増田本人なら文体も含めて成長したなあって脱帽するけど、たぶん違うんだろうな……

    • 言われて気づいてニヤリとしてしまった…

  • イタチノ女(スケ)

  • なんで魔王ジダラクーダを使わなかったのか謎…

  • 結局、名前だけポンと出されてもイメージが湧かないからイマイチなんだよね こういう風に物語で出されると理解しやすくてスッと褒められるんだ

  • https://anond.hatelabo.jp/20190712175723の感想をどうぞ

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