2019-05-05

「妹の姉」の感想

今更書くけどすごく良かった。

姉や兄はしばし妹や弟に追い抜かされる宿命にある。

何かを勉強する場合自分より少しだけ先に進んでる人が近くにいるというのはとても有利だ。いつも次のステップを予習できるし、全力でぶつかれるちょうどいいライバルになる。手探りで進む者より何段階か先に行くことができる。幼少期こそ年齢差で封じられるが、成長に伴い常勝が五分になったあたりで上の子はそのことに気づいてしまう。しかし下の子はずっと負け続けてた記憶しかいから、幼少期の頃のまま、上の子へ憧れと期待をぶつけてくる。

姉・兄はその「追い抜かされる事実」と「下の子の期待」に向き合わなければならない。

そういう上の子の複雑な気分を描いているんだこれは。

悲しいかな仲の良い兄弟姉妹でこそよく起きる。

大きく表彰された絵は「下の子の成長による敗北」、現実より美しく描かれた自分の姿は「不相応な下の子から憧憬」、裸が展示され晒されることは「自分けが気付いている敗北感の露呈への焦り」。そういうもの象徴したのがあの画なんだと思う。

あの姉は良い姉だ。妹に対してキレたり外から潰したり無視したりせず、自分の精一杯を見せることで気持ちに決着を付ける。ありのまま自分の裸でそれをやんわりと妹に伝える。

そして姉は就職し妹は美術の道へ進む。ただその結末はあまり現実的な理想図で、私は少し心がいたい。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん