猫が死んだ、飼っていた猫だ、猫は飼われていた。おれは猫を飼っていた。恐らく、地元でも有数の猫を飼う、そういう認識だった。
猫はよく外にでて、ミノという名前を付けていた。カイノミが好きだったからだ。彼女もミノをかわいがっていた。飼ってみたい、そうつぶやく言葉の奥に
どうしようもない寂寥が感じられて、おれはなにも言えなかった。カイノミはメスだった。よく鳴きよく子を為した。よく縁側で寝ては、よく寝ていた。
おれもよく真似をしてはミノに怒られた。臭う・・・らしい。くさいという意味ではない、猫にとってどうしようもない嫌悪のような感情らしかった。
ある日は晴れていた。猫はよく見ていた。晴れるという時は大体軒下で、万歳をしていた。猫は柔軟だった。みるにつけ、昔猫を飼っていたことが思い出された。
そっちはオスだった、実家の。そいつはよく鳴いた。喧嘩もした。だいたい俺が泣かされる、そういう関係だった。近所にも猫を飼う家がいた。近所は
飼うというよりも、放し飼いというか、野良を集めて世話をしていたような・・・そんな記憶がある。数匹単位がグループ単位で、皿が何枚かあったと
記憶している。それぞれがネコのテリトリーのようで、面白かった。カイノミはそのオスネコに似ていた。名前はガッチャマとかそんなたぐいの名前だった、
あまり不適当な、そんなものであったが、昔はそうだったらしい。
ガッチャマはよくケンカをしていて、オス同士のケンカの声をよく出していた、近所のオス猫は去勢していないらしく獰猛だった、よく自分の子供に腰を
振っていた、これは実際あるらしく、ヤツらにはそういう近親への嫌悪がないようなのだ。性欲に支配された獣だ。人も、おれも・・・