2010-02-22

自分の中の差別心との戦い(国母騒動について)

「2本目は逆転とか、誰かの点数とかに関係なく、自分の滑りをすることしか考えなかった。(ダブルコークが)決まらなかったら、どうしようもない。滑りのスタイルは出せたので、悔いはない。いろいろあったけど、最後まで応援してくれた人には感謝している。(服装問題の)影響は全くない。気にしていたらやっていられない。」


国母和宏選手の試合後のインタビューです。これは記事の引用だけど、実際にテレビで見ても、丁寧に受け答えをしてました。なんだ、普通に話せるんじゃん。悪態ついているように見えるのは、人当たりのいいコミュニケーションに慣れてないだけ、という感じ。

でもさ、オリンピックに出る人って、みんなが聖人君子で、品行方正でなければならないの?スポーツ選手って、みんなが人格者で、謙虚礼儀正しく、愛想がいい人なの?

そんなわけないでしょ。オリンピックに出るというだけで、人格の完成を求めるのは期待しすぎ。オリンピック学校道徳時間でもないし、生徒指導の話でもない。これらを「分けて考える」ことができなければ、日本は封建時代のままです。

今回、私が特に許せないのは、「彼を本国に召喚すべきだ」などと言い放ったコメンテーター国母を一片も擁護しなかった彼の大学世論に迎合して、彼に出場辞退を迫ったスキー連盟。

テレビ局はあのコメンテーターを使うべきではなかったし、大学自分学生である国母を守るべきだったし、スキー連盟は感情に任せた決定を下すべきではなかった。

結局、立場ある人で、彼を守ってみせたのは橋本聖子だけです。生意気だけど前途ある若者のために、深々と頭を下げることができた人は、彼女だけでした。試合後、橋本さんは「出場させた自分自身の判断は間違っていたとは思わない。」と言いました。当然です。橋本さんは、胸を張って日本に戻ってきてほしい。そして私たちは、それ以外の大人がいかに不甲斐なかったかを忘れるべきではないでしょう。

国母くんは決して日本という国を背負って、日本人エゴを背負っているわけじゃありません。そんな下らないものを背負っているとしたら、あそこまで空高く飛べるはずがない。あの顔のケガをみてもわかるように、彼は自分の命かけて、自分プライドをかけて飛んでいるのです。

国母"問題"は、私たちの心の問題です。私たちの中にある保守性や排他性に負けてしまった私たちの問題です。

考えてほしいのは、「公園にいるホームレス不快に感じて、暴力で排除しようとしたら、それは正しいのか?」ということ。もしくは、「みんなが不快に思うからといって誰かをイジメたとしたら、それは正しいのか?」ということ。

正しいわけがありません。今回、国母に出場辞退を迫った人たちは、「ホームレスなら危害を加えてもいい」「みんなが不快に思うならイジメてもいい」という判断をしたのと同じです。

幸いだったのが、国母くんがそんな「下衆の差別心」に負けないくらい、突き抜けていたということ。「(服装問題の)影響は全くない。気にしていたらやっていられない。」というのは彼の本心だと思います。彼はアスリートとして、カウンターカルチャー代表として、本当に突き抜けていた。差別心をあらわにして彼に牙を向いた人たちは、見方を変えれば、彼の「悪さ」に助けられたのだと思います。

嫉妬心や、世の不良の身代わりとして罰を与えてやろうという復讐心からの行動は幼いし、醜いものです。今回、彼に制裁を加えようとした大人たちは、大いに反省してほしいと思います。自分嫉妬心や復讐心を抑えられなかったこと。自分差別心と戦わなかったこと。そして、個人の尊厳を踏みにじろうとしたことについてです。

道徳は時に、自分差別心を隠して、気に入らない人を叩く道具になります。私たちは、自分の判断がそういった感情によるものではないのか、胸に手を当てて考えなければなりません。私たちの敵は、いつも私たちの中にいるのです。

  • オリンピックに出ることは国の代表であるということであり、そういう意識がないなら送り出せない。 まず服装ありき、礼儀ありきであり、能力はその後に考慮すべきである、というの...

    • 国母選手の行為は褒められたもんじゃないけど 普段国の事なんか全然考えて無さそうな人たちが こういう時だけ「我が国ニッポンの恥!!!!11」と声を荒げてるのは笑えた。

    • 世の中金ってことなら、国母にはサングラスメーカーがスポンサーについてるから、企業の広告塔になるという意味では、あの格好はとても正しかったということになるが。

  • もう日本は選手の成績じゃなくて人格者だけ選手にするようにしよう。 金メダル取っても庶民に見返りなんてないからな。

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