2024-03-30

call your name

「お掛けになってお待ち下さい」

と受付の看護師に言われたのが果たしてどれほど前のことだったか、もはや思い出すことができない。

長い、長い時が経った。

あれから元号が三度変わり、戦争が五度起こり、大地震が29回起きた。

長い、長い時が経っていった。

私は待った。

毅然として待ち、毅然として生きた。そうするしかなかった。そうすることが、私に与えられた命に対する礼儀だと私は信じた。

待合室は埃と死のにおいで満ちていた。

この場所出会って、共に支え合い励まし合い、時には傷つけあった仲間たちももはやほとんどが骨となり、野犬や盗賊にその骸を荒らされた。

皆誇り高く生き、誇り高く死んだ。

決して名前を呼ばれることのなかった者たち。

私は毎日、彼らの名前を呼ぶ。これは弔いだ。

サキさーん ササキタカヒロさーん

できるだけ高い声で

シミズさーん シミズアヤさーん

できるだけ高く、明るく、それでも確かに業務然とした心で

ヨシダさーん ヨシダリョウヘイさーん

私は名前を呼ぶ。

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