引っ越ししたおかげで、同居人との個室と距離が出て、流している音楽や口笛がお互いに聞こえなくなった。それと、リビングが広くなったので、リビングで一緒にご飯を食べれるようになった。家賃が2倍になったけど、生活の質が上がった。しかしながら、新しい家に越してから、夜な夜な不可解な現象に悩まされるようになった。深夜、家の隅々を埋め尽くす静寂の中で、何かがゆっくりと階段を上がる音が聞こえる。最初は風のせいかと思っていたが、その音は日に日にはっきりとしてきた。それだけでなく、リビングの広さが、今ではまるで私たちを観察する何者かにとっての絶好の舞台のように感じられる。夜になると、暗闇の中で何かがちらつくのを感じることがある。見たくないものを見てしまいそうな恐怖から、目を逸らす日々。家賃が高くても生活の質が向上したとはいえ、この不可解な出来事には、金額では解決できない何かが潜んでいるようだ。