1局目で負けてから、不本意な対局だったのか、すすり泣く表情が見えました。
対局がないときは会場の端で静かに本を読んでるようにみえて、気持ちの切り替えが上手な子なんだなと思いきや、ページをめくらずに自分と向き合っていたんですね。
その後、会場から姿を消したりして、やっぱり辛かったのかなと思ったけど、しばらくして君は戻ってきました。
1勝もあげることはできなかったけど、君が気丈に振る舞いながら、最後までたたかっていたのを視界の端でみていました。
「これからも将棋続けます」といって帰ったと聞いて、ほっとするやら身が引き締まるやら複雑な感情のまま、私も会場を後にしました。
「向き合う姿勢」を後から来た人に、言葉でなく振る舞いで教えられたことにちょっと、いやかなり、恥ずかしい思いです。
私は大人だから負けても泣いたりはたぶんしないけど、強くなりたい気持ちにはもう少し真摯に向き合うべきだということに気づかせてくれてありがとうございました。
「あえて付け加えるならば、将棋より暴力のほうがつぶしが利く。」 そう言って男は飛車をつまみ、弾いた。 飛車はさきほど少年を負かした男の眉間にめり込んだ。即死だ。