昔、ばあちゃんちには毎朝牛乳屋のおっちゃんが配達に来ていた。
夏休みには毎年ばあちゃんちに行っていたけど、ばあちゃんちはテレビくらいしかなくて、夜はめちゃくちゃ暇だったので、すぐ寝た。そしてその分朝は早く起きた。
そうすると、牛乳屋のおっちゃんがやってくる。おっちゃんはいいおっちゃんだったので、子供の俺には毎回おやつをくれた。
それがこんぶ飴だった。
いやいや子供にこんぶ飴っておっちゃんシブすぎかよ……と思わないでもなかったが、こんぶ飴はめちゃめちゃうまい。ほんのり自然の甘さって感じで、うまいんだよ。
キャンディみたいに紙に包まれていて(包装は渋い)、それを剥がすと今度はオブラートを被ったこんぶ飴本体が出てくる。
初めて貰った時はオブラートをプラスチックだと思って剥がして食べようとしたが、何度か貰ううちに「このプラスチック(※オブラート)は食べれる!」と学習し、外側の包装を剥がしてはすぐに口に放り込んだ。
夏の気温に柔らかくなっていて、口の中で転がすと気づいた時には無くなっている。俺はおっちゃんから貰うあのこんぶ飴が好きだった。
ばあちゃんちにいつの間にか行かなくなって、牛乳屋のおっちゃんにも会わなくなって、俺はいつからかこんぶ飴のことを忘れていた。のだけど、スーパーで牛乳を買おうとして思い出した。
ので、牛乳のついでにこんぶ飴も探してみて、売っていたので買ったんだけど、めちゃめちゃまずくてびっくりした。
いや多分普通にこんぶ飴としてはおいしいんだと思うんだけど、俺が求めてたこんぶ飴の味じゃなくて、その差に舌がびっくりして「えっまず……」って素で言ってしまった。
あのおっちゃんはどこでこんぶ飴買ってたんだろう。