おばあちゃんは現世では矍鑠とした姿だったけれど、天国では火鉢の前で暖を取りながら「よく来たねえ」と言った。
おばあちゃんは中国から初めてパンダがやってきたときのことを話し始めた。
おばあちゃんのまわりでは最初「中国から龍がやってくる」という噂が流れたという。おばあちゃんは「バカか」と思っていたけれど、おじいちゃんが「うちも中国から龍を譲ってもらおうや」というホラを吹き始めたので、龍を探す冒険物語をふたりで語り合ったという。上野動物園にパンダがやってきたときは、ふたりで大笑いしたという。
おばあちゃんはそう言ったけれど、僕は龍の話が面白かったから、続きを聞きたいと言った。パンダは写真で見ただけで充分だと思った。
上野動物園にパンダが来たと聞いたおじいちゃんとおばあちゃんは、龍が来るなんてとんでもない嘘だった、きっとタヌキにでも化かされたんだろうというオチをつけたという。おばあちゃんは「タヌキなんて食べてしまいましょう。」と言って「緑のたぬき」を出してまた笑ったという。
夢から覚めて天国のおばあちゃんと話したことを話したら、家族みんな大笑いしていたけれど「現実のおじいちゃんとおばあちゃんもこんなに仲が良かったのかな」と尋ねると、おじいちゃんは戦争のときに死んだだろうと指摘され僕は精神病院に行くことになった。