出張先のホテルから徒歩15分のところに漁港がある。寂れた小さい漁港なんだけれどもどうやらそこから灯台を見ることができるらしく、夜のその灯台の美しさは、七罪消滅して極楽浄土にいけるほどだという。
それを聞くなり「ほほ。これは、僥倖」とつぶやきつつ、テクテク歩きで漁港に行った。夜の漁港は、黒い海面がヌラヌラとぬらめきながら町の明かりを反射して、そこにいると何だか神聖な気持ちになるものです。
港内に人影があった。それは、ヤンキーだった。どうしてヤンキーだったかというと、髪の毛を金髪にしていてパーマだったからである。しかも小太りのヤンキーだった。ヤンキーはそこで何をしていたか。釣りをしていた。尋常じゃなく短い釣竿だった。漁港の暗闇の中で、ヤンキーは釣り糸を垂らし、うつ向いて黒いヌラヌラした海面を集中して見ていた。
ヤンキー・イン・ザ・ダーク。そう思った。