最近街を歩いていて、すれ違うスーツの人を見ても何とも思わなくなり「ああ、自分はスーツフェチじゃなくなったんだな」ということに気づいた。
女子高生のころにはよく、家出をして二十七歳くらいのスーツの人に拾われて暮らしたりするんだって妄想した。
多分スーツフェチになった理由の一つは、自分の周りにスーツを着るタイプの大人がおらず、スーツの男性にどこか虚構的な憧れを感じていたのだと思う。
三十二歳くらいまではスーツフェチが継続していた記憶があるけど、大人になった私には、スーツの男性は徐々にごくありふれた、ただの人になっていた。
小学生のころに好きになる相手は小学生だったし、中学生の頃はやはり中学生で、その時にはその年代の相手にそれ相応の魅力を感じていたんだけど、高校生になって小学生には恋をしなかったし、それに似た何かが、スーツフェチじゃなくなった私に訪れたのだと気づいてハッとした。