夢をみた
あれは卒業式だった
僕らは体育館に出席簿順でならび,いつもの顔ぶれが周りに並んでいた.
隣はずっと好きだった君だった.9年間も同じクラスだったから何度も隣になったな.
式は厳かな感じじゃなくて,各クラスの代表が思い出を話したり,誰かをいじったりしてみんな笑ったり泣いたりしていた.
僕も泣いた.なんだか恥ずかしくなって君のほうを見る.目が合うが泣いているのは僕だけみたいだ.(ずるいな,いつもこういうところで簡単に泣くのは君の方なのに)
はずかしくなって,もらい泣きしちゃったなどと照れ隠ししながら昔の話をする.
距離感は昔のままだ,懐かしい感覚.君はいつもそうだった,僕の気持ちを知ってか知らずか,微妙に近い距離間をいつも保ってる.(結局伝えることはなかったけど.)
あーだこーだとひととおり話した後,君は手を僕の胸のあたりまでまっすぐ伸ばしてくる.
何かと思って顔を見ると顎で指示してくる.手を繋げというご命令らしい,多分.
手をつなぐと,君はとおくをみて寂しそうに笑いながら喋った.(いつも明るいのに時たまそうやって寂しそうにするのも好きだった)
「私,やりたいことがあるんだ」
「おれもだ」
そう答えて僕は目を覚ました.
きっとこの続きがあったとしたら,君はかつてのように他意のない様子で「がんばれ!」って言って僕はそれで照れくさくなったんだろう.
そうだった,そういう何気ない言葉でいつも僕は嬉しくなって頑張ってしまうんだった.そこに他意がないってわかっていても.
懐かしい感情を思い出した.なんだか今を頑張れそうな気がする.ただの都合のいい夢だとわかっていても.
夢・・・夢を見ている・・・
お前の夢も監視しているぞ