よく、大人になってから読み返す・見直すと、また違った見え方がするよ、という。
それは確かにそうだ。
私の大好きなドラマを最初に観たのは中学生の時だった。あの時は、主演の俳優がとにかくカッコイイことや、相手役の女優が不満だったことや、こんな都合よくいかないだろ、とか、全体的に良く分からなかった、そういう印象は残っている。
30歳にして見返した。ここで微笑んだのは相手を安心させるためだろう、とか、手首を掴んだのは生への執着と現実との葛藤、とか、登場する女性たちがこの男の何に惚れているのか、抱きしめたくなった気持ちわかるとか、嘘の優しさとか、そういうのが伝わった。
しかし不思議なのは、私にはその経験がないことだ。好きな男性に、私を心配させまいと微笑まれたことない。生への執着と現実との葛藤なんてしたことない。こんな男が周りにいたことも、それを取り巻く女性を見たことも、ない。泣く男を見て抱きしめたくなったことはない。優しい嘘をつかれたことがない。経験もないのに、なぜ、私は分かるのだろうか?