2016-01-13

溶血

連れ出されてから時間たっていたのだろう ・・・ 車はどこかに止まっていた。男が試みた二度の自殺殺人は、両方とも失敗していた。そうそれは自殺と身勝手理由での殺人を試みた男の話だ。

止まった車の中でその男注射器を取り出し、私の腕を掴むとそこから私の血を抜き取った。それはそのまま男の腕に注射され再び血が吸いだされた、男の血が入った注射器は私の腕にその血を注入した。

何が行われたのかは、私にはわからなかった。そして再び車を走らせ始めた男は、今自分がした事が何なのかを淡々と話し始めた。「血液型が違っている血を輸血すると、溶血といって赤血球が壊れて死ぬんだ。血を抜くよりも苦しいから使いたくなかったんだけどね。」と。

それは輸血ミスという事で起きるのと同じことで、今した事で何時間かのちには二人とも死んでいる事になるという説明がその後に続いた。そうか、あと何時間かしたら自分は死んでいるんだ、と私はぼんやり思った。ただ、それだけだった。もうそれは行われた事で、終わった事だった。

薄暗い中、銀色の道を走り出した時から、それは私にとって現実ではなかったので、私は泣きも叫びもしなかった。

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