端の席に座ってうとうとしていたら、隣に赤ちゃんを抱きかかえた女性が座ってきた。
赤ちゃんが大きくてまあるい目でこっちを見てきた。
この子は美人さんになる顔だな〜と思いながら、お顔に癒された。
人工的にはまだまだ作れなさそうな、心の底から安心する自然な匂い。
全身がゆっくりと解きほぐされるような、くせのないやわらかな匂い。
ほんのりと香ってきて、まるで高級なベッドとお布団に身をあずけているような感覚になった。
ときどき赤ちゃんの手やぷにぷにの足が、座席にだらりとしている私の腕や手に触れる。
ちゃんとベビーパウダーをつけてあげたのだろう、すこしさらさらな感触もある。
やすらかな乳くささ。
愛されている素肌。
このやさしい三大要素が、まるで空気にとけてなくなってしまうような眠りに誘ってくれた。
ちょうど日差しもそこそこだった。
ここは本当に電車内なのか…と思えるくらいに上質で、幸せを感じる眠りの時間だった。
駅に近づいて起きた時ですら、いい目覚めだった。