私はリスカが趣味でよくやっている。冷たいカッターの刃を手首につきたてる瞬間、アドレナリンで視界が虹色に染まるのが好きだ。落ち込んだことがあると、これで発散する。リスカがなかったら今の私はないだろう。
だから親友が失恋して落ち込んでいる時にリスカを薦めた。嫌がっていたけど、絶対これで気分が良くなるからって、無理やりにやらせた。
私が彼女の手首を切り裂いている間、彼女は絶叫しながら私の腕に噛み付いてきた。私の腕に彼女の歯型が刻み込まれた。快感のあまり視界が真っ白に染まった。その瞬間、世界に居たのは私と彼女だけだった。私と彼女の腕から流れた血が滴って、混じって一つになった。私達は神聖な時間を共有していた。
だけどそう思っていたのは私だけだったようだ。彼女は腕に傷が残ったことを気にして、塞ぎこむようになった。小さな物音にひどくビクつき、周囲に人を寄せ付けないようになった。やがて学校にも来なくなり、自室から出なくなったそうだ。
一度、彼女に会いに行ったことがある。
彼女は始め私の弁明に耳を傾けていたが、急に激昂してハサミで私に切りかかってきた。すんでの所でかわしたけど、耳を切られて傷が残った。
彼女はずっと、殺してやるって叫んでいた。本気の殺意だった。怖かった。
どうしてこんなことになったのだろう。