2015-03-03

万華鏡

万華鏡を覗いてみたくなった。だがあいにくカネがない。

そこでおれはトイレットペーパーの芯とアルミホイルを用意した。

そしておれはいものように妖精を飼っている

知人のところに行って事情を話した。

友人を介して妖精に、おれが万華鏡を作ろうとしていることを妖精言葉

伝えて貰う。妖精ひとつだけ条件があると言った。

それは、毎度ながらおれの耳を貸せというものだった。


妖精といっても種類は様々だ。友人が飼っている妖精蟻ん子ほどの大きさだ。

そんな大きさの妖精が、おれの耳の穴に入り込んでくる。

妖精はおれの耳垢が大好きなのだそうだ。粘り気のないサラサラした

あっさりとした耳垢が美味しいのだという。おれは耳がこそばゆいのを

我慢しながら妖精に耳を預けた。妖精が耳垢を舐め取る

ゴソゴソという音が脳に直接響いてくる。

どんなノイズミュージックよりも気持ちがいい。


そんなふうにたらふくおれの耳垢を食べた妖精は早速

万華鏡作成作業に取り掛かる。トイレットペーパーの芯の中に

アルミホイルを貼り付けていくのだ。妖精自分の唾液を糊として

アルミホイルをぺたぺた貼っていく。うっかり潰さないように

こちらも気をつけなければならない。まあ、踏んだくらいで死ぬような

妖精ではないのだが、これは怪我ではなく不機嫌の問題に属する。


出来上がった万華鏡の片方の穴を紙で塞いで、中に妖精を入れる。

おれはそのトイレットペーパーの芯を覗き込む。

妖精は自ら光を放つ。それが内部に貼り付けたアルミホイルに反射して

ちょうどいい塩梅幻想的な世界を映し出してくれる。

つべものは友だ。そう思いながらおれはその万華鏡にうっとりと魅入る。

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