2015-01-21

尊い人

私の家族や親類はみんな優しい。世間にありふれた問題はいくつか抱えているものの、ほんとうにいい人がばかりだ。

けれど、腰を曲げてなお矍鑠と動き回っていた祖母は、認知症が進行したのと足を悪くしたので毎日同じ文句をテープのように繰り返している。毎夜陽気に飲み歩いていた父は、物忘れをするし、弱音も吐くようになった。毎日アホみたいにふざけあっていた母は耳が遠くなり、小さい頃から映画ゲーセンに連れて行ってくれたおばは持病が悪化して手の感覚がなくなってきた。いっしょに登山キャンプにも行った犬は、便失禁などを起こし、白内障も患っている。

もっともっとたくさん、お世話になっている人はいて、その人たちがみんないつか死んでしまうと思うと、すごくつらくなって、声を上げて泣いてしまう。

終わりがあるから輝ける、みたいなことを言う人もいるけれど、その輝きの尊さがやっとわかってきたころに終わりが見え始めるのなんて、つらすぎる。楽しい時間を過ごすと、また悲しくなる。私の記憶の中の輝きを保って、どうかそのまま死なないでと思う。

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