通勤途中の電車に、ランドセルのほうが大きい、見るからに小学校1年生の小さな女の子が、大勢の人並みに押されて乗ってきた。
そんな状況なのに、自分の真下で、漢字だらけの1枚の紙を見てるから、1年生なのにえらいなあ、と思って見てた。
で、自分は押されてホームに出たら、自分のカバンに、ピンク色の小さな傘がぶら下がってる。
すぐに、あの小学生の傘だ、と思い、電車から押し出される大勢の人並みを押し分けて逆行した。
ちぇっとかいうおっさんもいたけど、とにかく1年生に渡さないと、電車のドアが閉まってしまう。
ここで傘を渡さないと、家に帰って、お母さんに怒られるだろう、と思いながら、発車音が終わろうとした時、
電車の中の1年生を見つけ、ピンクの傘を差し出した。その子は気付いてなかった様子だったけど、すぐに手を伸ばして、傘を握ってくれた。
そこまでが精一杯。まさに間一髪。体は逆方向だから、後ろ向きに人波の引き潮に乗って、ホーム中央に押し出された。
よかった。渡せて。