2011-05-20

Equilibrium omnium contra omnes:Log1

【先遣隊遺失物調査官Gentyによる思考ログ

温度モニタに示される外気は、とても冷たいものであった。ただ「外気」といっても、この巨大な《ストラクチャー》に「内や外」があればの話だ。

今のところ、我々の先遣隊のいずれもがこの《ストラクチャー》の「境界」を発見してはいなかった。

三次元フォログラムはその「部分」を視界に示すが、この《ストラクチャー》の位相的性質については未だ明らかになっていない。

もちろんその中心部には惑星《ゴブ》の「大地」があるだろう。ただこの《ストラクチャー》がその大地に「根ざして」いたり、「建って」いたりするというわけではないようだ。大まかに言っても、この《ストラクチャー》は今のところ、この惑星を「包み込んでいる」。

それにしても寒い。この環境は有機生命体には最適化されていない。概ね、高純度ケイ素体の電磁誘導のために最適化されている。にしても、この環境最適化結果であるとも言い切れない。今のところその境界と同様に惑星《ゴブ》の「自然と人工物」の区別もできていないからだ。

フォログラムの断片から窺えることは、この《ストラクチャー》がフラクタル的複雑性を持つこと、有用性以上の目的をもった装飾が見られること。付け加えて―これは先遣隊文明調査局によって明らかになったことだが―この《ストラクチャー》が彼らの創造主たちが《baroque》と呼ぶ様式に近いことくらいである。

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