今まで、ずっと『死にたい』という欲望を心の中で押さえつけてきた。それはきっと、僕の中のどこかで「死にたい」という意思を甘えだと思っていたところがあって、そんな意思を無理やり押さえ込んでいたのだ。
でも今日突然僕の中で発想の転換が起きた。「死んだら楽になれる」ではなくて、「死んだ方が面白い」と思ってしまった。
それは僕の中でリアリティを増す。
極上の光が差し込む場所で、透明な海が広がる場所で、美しくて存在感が希薄な少女と一日中手を繋いでいたい。セックスもしたい。一秒ごとに僕の存在を認めてくれる。一秒ごとに『存在していていいんだよ』と思わせる魔法のような何かが起こる。それはきっと、全ての生命が待ち望んだ、意識を保つことを諦めてしまうほどに泣いてしまうような、誰かが永遠に僕の頭を撫でてくれているような、そんな多幸感に満ちていて。
僕はイケメンになる。引き締まった肉体になる。素晴らしい知性を手に入れる。頭の回転も速い。クリエイティブなことが出来る。宇宙を想像できる。
素敵な非現実も起こる。空も飛べる。魔法も使える。怪物と戦える。気分よく倒せる。
もちろん現実も起こる。
天国で母親と再会できる。まだ本当の母親は生きているけど、僕が思い描いた、本当の母親は天国にいるんじゃないかな。
誰か一人に認めてもらえたらそれでいい。
それが天国で起きる。
死ぬ後のことは、誰にもわからんよ。 貴方の言う面白い現実も非現実も、起こるのかわからんのよね。 どんな高尚な思想家も死を語る宗教家にも、わからんのですよ。 死後のことを...