2021-11-04

わたしの夫は「ッ」の発音が苦手だ

付き合い始めて少し経った頃、尋ねてみたことがあった。

なんでも昔から、小さい「ッ」の発音をしようとしてどもる事が多かったせいだと彼は言った。

その彼が夫になった今、わたしは不満を漏らしたことがある。

最近、どこにも連れて行ってくれないのね」

「ごめん、仕事が忙しくて。でももう少しで一息つくから、来週末にも出かけようよ。ベビーシターを頼んでさ」

シターってなんだよ、と口から出そうになったところでわたしは止める。

「どこか行きたい所ある?」

ディズニーランドかな。案外今は混んでないって、ツイッターで見たわ」

別にいいけど、ツイターの情報なんて当てになるのか?」

ツイターって、まだどこにも行ってないわよ。

そう声を出しそうになるのをわたしはぐっと堪える。

「それよりまた知らないバグがあったけど、どうしたんだ?」

バグと言われてわたしはえっ?となり一瞬考え込む。

……ああ。

すぐにそれが”バッグ”のことだと気付いて、わたし言い訳をする。

「ごめんなさい、一目見て気に入っちゃって」

「ほどほどにしておけよ。この前だって、なんとかっていうアニメのグズ買ってただろ?」

”グッズ”のことだとはすぐに察したが、”クズ”のように聞こえてあまりいい気分でない。

「それはいいでしょ。今、流行ってるんだから

「だからって浪費は良くないだろ。これから何かとお金必要に――」

「わかってるわよ」

少し険悪なムードが漂い始めるとわたしは立ち上がって冷蔵庫に向かう。

この雰囲気を和らげようと、わたし冷蔵庫から果物を取り出すと夫の元に戻る。

「ねえ、この前○○ちゃんのお母さんから果物を頂いたんだけど、何だと思う?」

何?と尋ねる夫に、わたしは後ろ手に隠し持っていた果物披露する。

「じゃーん!これです!!」

「おおっ!パイナプルか!」

まり自然な感じがしないことに、わたしちょっとだけ悔しさを覚えるのだった。

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