俺の親は別に毒親ではない、と思う。
衣食住は十分な環境を与えてくれたし、俺の将来のためにたくさんの経済的支援をしてくれた。そのことについては感謝の気持ちはある。
けれど、俺は、幼い頃から高校時代まで、親の教育方針に自尊心を傷つけられて生きてきた。
具体的には、読書以外の娯楽の一切を禁止され、定期考査や発表会で「投資」に相応しい結果を上げるために勉学や習い事に励むことを強制された。怠けていると思われたり定期考査や発表会で親が納得できる結果が出せなかったりすると、親の気が済むまで殴られて暴言を吐かれた。四半期に一回くらいは、しばらく洗髪を見送りたくなるほどのタンコブを頭に頂いた。一ヶ月に一度くらいは、翌日に顔の腫れが持ち越すほど泣いた。
大学に入学して、一人暮らしを始めると、親の過干渉さ加減はすっかり鳴りを潜めた。ゲームをしたり漫画を読んだりテレビをだらだらと見たりしても、誰からも殴られたり罵られたりしない自由が、本当に眩しかった。
だから、本当はずっと親と距離をおいて生きて行きたかった。しかし、なかなか上手くことを運ぶことができなかったので、俺は実家に出戻ることに決めた。
実家に戻ると決めた日から、自分で決めたくせに、言いようのない漠然とした不安がつきまとうようになった。体は大きくなったし、体力もそれなりに付いたので、殴られるのはさして怖くもない。怖くないはずなのに、帰るべき実家について考えると息が詰まって、泣きたくなる。一度、泣いたらすっきりするかと思って泣いてみたら、呼吸がおかしくなって、嘔吐した。
それ完全に毒親よ。 人様の親にこんなこと言って申し訳ないけど。