2010-12-17

権力による表現規制に断固反対する。

世間では東京都条例が話題になっているが,もっと強固かつ凶悪な規制を行っている主体について,何故かスルーされている。出版社のことだ。

面白ければジャンプは全部載せる」などと言ったそうだがパンチラや擬似フェラ面白くてヤミたんの乳首面白くないということだろうか?んなわけない。ジャンプでは現に性表現規制されているのであって,その基準がもし「面白いか否か」だったならば,これ以上に曖昧かつ恣意的な基準はない。結局のところ件の発言は,実際には「面白く,かつジャンプの性表現規制に引っかからなければ,ジャンプは全部載せる」と言うに過ぎない。自らが行う性表現規制を棚に上げ,あたかも性表現の守り手であるかのように発言するのは欺瞞も甚だしい。実際のところ,面白くない漫画規制されている点で東京都よりも厳しいのだ。

だいたい出版社が行う規制のことを世間では「自主規制」と呼んでいるが,出版社から見れば「自主規制」かもしれないが,作家から見れば出版社は他者である作家表現の自由の観点からは,出版社による規制は「自主規制」ではない。「放送禁止歌」の放送を禁止したのは,美輪明宏はなテレビラジオ局なのだ。

しかもこの規制は,強固かつ凶悪だ。この規制に逆らえば,流通制限どころか出版自体が事前規制によって不可能となる。しかもその影響は作品単独にとどまらず,作家について属人的に,出版規制されることさえあるのだ。「同人で書けば良い」等というのは嘘だ。正規の流通ルートに乗らなくなっても問題ないというなら,東京都条例もまた問題ないことになってしまう。

こうした事前規制が,不明確な基準によって行われている。各雑誌出版コードや成人向け指定の境界について,明確な基準があれば教えて欲しい。不明確な基準の萎縮効果はさんざ論じられているところである

それだけではない。事前規制を潜り抜けても全く安心出来ない。担当相談の上でヒロインとの和姦を描いたら,妊娠結婚での打ち切りを余儀なくされることまである大学進学やライバルといった伏線は全て台無しだ。出版社規制場合後出しジャンケンによって,作品の内容すら枉げられてしまうのだ。

だいたいこうした規制の根拠も不明だ。ジャンプ乳首を描いたりマガジンで和姦を描くと犯罪が増える等ということが,科学的に証明されているだろうか?

それに,規制の根拠は別の方向からもやはり不明だ。成人向けとそれ以外とは実際のところ「消し」の大きさで区別されているが,仮に性表現による何らかの「悪影響」が認められるとしても,その多寡は消しの大きさで決まるだろうか?つゆダクや暴想処女ナナとカオルやNIGHTMARE MAKERやえんじがかりに比べ,性本能水爆戦の「悪影響」の方が大きいなどとどうして言えるだろうか。消しの大きさという基準は,規制されるべきでない作品まで成人向け指定されてしまう点で,目的達成のための合理的関連性すら認められない代物だ。

しかも成人向け指定がされていても,なお消しを入れなければならない。しかも,消しをどの程度入れるかについて,やはり明確な基準はない。今日の基準はクリトリスに髪の毛一本分の黒線を引けば良いという程度のものであり,ここまで緩和されたことで単なるクンニや手マンを超えて栗吸いや膣内での指曲げといったより精緻表現が可能になり表現の幅が広がったのであるが,こうした表現が可能になったのはつい2〜3年前の話だ。この間に基準が改められる明確なアナウンスがあったわけではない。つまり,つい数年前までの作家は,不明確な基準のために表現が萎縮していたのだ。

出版社による,無根拠であり,不明確であり,強固凶悪な性表現規制に,我々はNOの声を届けなければならない。

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