2024-06-07

名刺はいりませんか」

その声の方へ顔を向けると、駅前スーツ姿の女の子が声をあげている

名刺はいりませんか」

みなは何が起きるのか知っているらしく、顔を背けて通り過ぎる

名刺を配りきらないと帰れないんです」

それでも彼女に声をかける人はいない

雪の降る街に彼女の声が消えてゆく

かねた私は彼女に近づき、マッチをひと箱差し出した

彼女ひとつ礼を言うと、マッチを擦り持っていた名刺に火をつけた

すると不思議なことに、その炎の中にひとつの情景が浮かんできた

誰かが机に向かってぺこぺことお辞儀をしている

と、火が消えると同時にその光景もフッと消えた

彼女はもう一つマッチを取り出して名刺に火をつける

今度はたくさんの人が直立不動で並び、ひたすらに何かを叫んでいる

と、その中に彼女らしき人を見つけたと同時に炎が消えた

それから彼女ひとつ名刺を燃やすたび、様々な幻影が現れた

電話をかける姿

スーツ姿でベッドに倒れ伏す姿

机に並ぶ栄養ドリンクの空き瓶

そうしてすべての名刺燃えしまった後、どこか晴れやかな顔をした彼女はこう言った

わたし、今の会社辞めます

それがいいと思うよ

  • ええな 初夏に書かれるのが、またええ

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  • やりなおし  そういうのやるのは4月だからネタとしてクソすぎでしょ

  • 「名刺挿入りませんか?」 駅前でスーツ姿の女の子が名刺を挿入れようとしている。

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