■ぼくはよく、両親をころす。
脳内で。
親はいつか死ぬ。たいていはその子よりも先に。
こうした考えを持つのは早ければ小学生か、中学生か高校生か。
おそらく思春期の頃にそのような考えにたどり着くことだろう。
人によって、早ければ祖父母や親せきの死に立ち会うこともあるだろう。
それを両親に重ね合わせ、夜ごと涙で枕を濡らす。
自宅からほど近い実家には週一回ほど顔を出す。
そのたびに孫の顔が見たいと催促されるものの
ふがいないぼくには二十歳を過ぎて未だ彼女の一人もできはしない。
けれども、両親がどういう思いでぼくを育ててくれていたか
どういうことに悩み、憤り、憂いて、喜び、悲しがっていたか。
想像するたびに、ぼくはまた夜ごと枕を涙で濡らす。
親とて人の子、ぼくと同じ人の子だ。
僕もまた誰かと一緒になり子どもを拵えるのだろうか。
彼または彼女も、頭の中で僕をころして涙を流してくれるだろうか。
さて妄想ばかりしていないで街へ繰り出そうじゃないか。
昼は長いぞ走れよ坊主。
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