2021-07-05

今はちょっとだけ大丈夫になったと思う

足の遅い小学生だった。

マラソン大会など苦痛で仕方がないものの極地で、練習で校庭を10周すべきところ何周走ったかなんて片手を過ぎないうちにもうわからなくなっていた。

酸欠で朦朧とし始めた頃、視界の端にゴールとそこに向かう同級生が見えて、苦しさから解放されたい一心でそちらにフラフラと吸い寄せられた。ゴールの向こうに座って並んでいるのは一人だけだった。足が人一倍遅い自分が二着の札を受けとっているのはどう考えてもおかしいのだが、一周足りなかったと気づくのにしばらくかかった。

学年で一番脚の早い一着の彼女に「すごいね!頑張ったね。」って言われて、数え間違ったことを言えなくなってしまった。それを言えなかった自分よりも、誰からも「一周足りなかったでしょwww」って言ってもらえないことを呪った。

授業が終わるまでの十数分が永遠のようだった。

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