30年、誰にも言えなかったって、泣きながらあの子が打ち明けてくれたのは先月。
ぽつぽつと五月雨のように、行きつ戻りつしながらしてくれたのは、よく死なずに生きてたなって思うような話やった。
何日も、何時間も、できる限り寄り添うようにしたけど、何一つ気のきいたこと言ってあげられなくて、私はほんとに役立たずで、ちっちゃい子みたいにわんわん泣いてばっかりで、あの子はというと泣いたのは初めの1回きりで、「もう、ずっとずっと昔の話やねんで、増田さんが泣かなくてもいいねんで」って慰められたりしてた。
私は泣きながら怒って、怒りながら泣いた。
あの子を未だに苦しめる、セクシャリティやセックスへの認識を歪め続けるかつての加害者たちに。
「夜が怖い、暗いのが怖い」とあの子が言うたびに私は「怖がりやな」って笑った。
「夫に触られるのが嫌やねん、そういう行為が嫌やねん」と言われるたびに「男の人にとったら、それはかわいそうかもよ?」と話した。
何でこの子がずっとそんなふうに苦しめられ続けなくてはいけないのかと思うと、腹が立って怒って、かわいそうで泣いた。
私が憤怒で泣くたびに、あの子は「私も嫌やって言わへんかったから悪かった」「誰かに助けを求めるべきやった」、そんな自責の言葉ばかり並べた。
そんなわけない、絶対に違う、あんたは何にも悪くない、やったやつらが悪いに決まってるやん!何で怒らないの?って聞いたら、「だって殺されなかったから」って、「怒るより、ああ、きょうも死なずに済んだって思うよ」って笑ってた。