主人公(作者?)は日常的な債務と病状に追われて、それが当人からしても効いていないとしながらも非日常的な情景を追い求める。彼にとってそれは仙台であったり長崎であったりした。
彼は散策を好んだが、そのうち明るい街よりも、明かりの届かない暗い町並みに強く惹かれるようになる。そして彼はある店舗で色鮮やかで美しい檸檬を買ってしまった。この逃避の気持のままに百貨店へと入ってゆくのだが、急に日常へと呼び戻されて全ての興が冷めてしまう。彼はそこで一計を案じ、先程買った檸檬を百貨店に細工した上で去っていった。ここに彼の感じていた日常と非日常の交錯は完成する。
逃避的で幻想的な世界と猥雑で明瞭な世界をいたずらごころで混ぜ合わせる、病んだ風流人のお話。
こういう感覚って、赤ちょうちんをはしごするような意識があるやつには分かるかもね。ただし梶井の場合健全な意識とは到底言えないが。
一度ならず二度までも頭皮と書いたなら 頭皮を貫けよ お前はそういう奴だよ