その人は勉強が得意な方ではなく、明るいバカという印象を持たれているような人間だった。
自分で言うのはおこがましいが、当時の私は勉強ができる方だった。中学生の世界なんて井の中の蛙だ。
だから、当時の私は、その人のことが好きで仲良くしていたが、同時に見下している節もあった。
友人は、勉強は得意でなかったが、好きな物事に対しての情熱はすごかった、ように思う。
私も同じものが好きで、ゆえに友人と仲良くなったが、今思うと、その情熱や傾けるベクトルは、段違いだった。
正直に言おう、私も友人も、絵を描くことが好きだった。
友人は、絵を描くことを楽しんでいた。また、絵を描くために必要なものもたくさん持っていたし、集めていた。
私にはそれがとても羨ましかった。私は、画材は高いから、とか、興味が無いから、とか、いろいろ言い訳をして、持つことをしなかった。
その時点で私たちの差は天と地ほどに離れていた。
友人はみるみるうちに上達していった。当然のことだ。
今、友人は、自分の好きなことを活かして働き、しっかりと自立している。
私は今でもこれでいいのかと悩んでばかりだ。
今もたまに友人の描く絵を見せてもらうことがある。
中学生のころなど比にならないくらい上手くて、輝く絵を描いている。
私は友人の描く絵が好きだ。だけど、同時に、その絵の粗探しをしてしまう。
友人が羨ましいから、眩しいから、私が友人に勝っている部分が少しでもないかと、探してしまう。
今より若いころは、自分と友人を比べて、泣くくらい悩んだこともあった。
今は、大人になったし、昔よりは劣等感も少ない。粗探しをすることも少なくなった。
いつか、「お前に憧れていた、嫉妬するくらいには。」と笑って言えたら、その時ようやく、追いつくのだと思う。