ある日、青い犬が見えるようになった。ストレスからだろうか。一人暮らしの部屋に、営業先のエレベーターに、いいタイミングでひょっこり現れるのだ。ワンワンと鳴いて励ましてくれるので、一緒に暮らしていた。
彼は文字を食べた。
するとだんだん大きくなって、豆粒ほどの大きさだった彼はいつしか六畳のワンルームを埋め尽くした。これでは暮らせない。そう思い、その犬を置いて引っ越した。でもそうすると寂しくて、すぐに拾ってしまった。
新しい部屋は前よりも広かったのに、すぐに埋め尽くされた。それからは日に日に大きくなる犬に押しつぶされながら暮らした。
ある日、不手際で彼にぶつかってしまった。すると、パンと風船のように割れて、青い犬は消えてしまった。
彼は私を知っている。私も彼を知っている。だって、ずっと一緒にいたのだ。