寝る前はいつも2段ベッドの下でくつろいでいる。
仕事の都合で嫁の方が寝るのは早い。色気もクソもなくガーガーいびきをかいている。スマホの明かりだけの視界の隅に、少し違和感があった。
気のせいかな、と思った。いや、思いたかった。思い切って、壁の方に目をやってみる。
ゴキブリ。
ぎゃあっと心の中で叫んだが声にはならない。ヤツは壁をつたって上に昇っていった。2段ベッドの上には嫁がいる。すぐさまベッドから降り、嫁の身体を揺さぶってみる。
「ん…どこ…」
「すぐそこだよ!そっちにいる、あ、ああ〜」
「…殺しといて…ZZZ」
「え、ちょ…!ええ…」
恥ずかしながら俺はゴキブリが出たときの対処をいつも嫁に任せていた。非道い夫だと思われるかもしれないが、嫁はゴキブリに関しては本当に全然ヘーキらしいのだ。だがしかし、今回はソレが仇になった。あまりにも動じなさすぎる。(と言うか、寝ている)
というのが、数時間前の出来事。ゴキブリは物陰に隠れてしまった。嫁は朝早いから今更起こすわけにもいかないし、集合住宅でこんな時間に物音を立てるわけにもいかない。
さりとて眠れない。なんて心細い夜だろう…いやもう早朝だが。殺虫剤片手に、どうしようもない今の状況を、とりあえず増田に記してみた。