会社を辞めて、父が自分で会社を興したその年、息子である自分は県外の高校に進学することを決めた。
新幹線の通る駅まで送ってもらう車の中で父はこういった。
「自分がもし結婚していなかった、もし子供がいなかったら、もっと挑戦できたかもしれない。でも、お前らがいなかったら、俺はとっくの昔に死んでいたかもしれない。」
自分がどう返答したのかは覚えていないけど、唯一忘れられない父親だ。
それから、自分の結婚のために番組を降板することになったのに号泣する女子アナを見たり、週末に家族との予定があって仕事が進まないと愚痴をこぼす同僚を見るたびに複雑な気持ちになる。
女子アナにとっての、同僚にとっての家族は足かせなんだろうか、それともかけがえのない存在なのか、その両方なのか。
選ぶということは、選べないということである。片方を選んだら、片方は選べない。