2017-08-21

絵本を売る

絵本を売ることに決めた。

絵本が1段まるまる占有している棚を片付けたかったし、ついでに小銭にもなるし。

買取りの申し込みを済ませてすぐに、棚にあるたくさんの絵本を取り出した。

どれもも10年以上開いていないと思う。埃だらけだった。

1冊ずつ埃を払って簡単に拭いて箱に入れていきながら、やけに色々なことが思い出された。これは兄の本、これは妹の本、これは毎晩兄妹で取り合うほど好きで、これは妹が本屋の床に座り込んで泣きわめいて買ってもらっていた本……

どうせ持っていても読まないのに、手に取るだけで想像を絶する密度の思い出が甦るこれらのメディアを、二束三文に変えようとする自分の薄汚れた手を見た。

売られた絵本は、新たに求める人の手に渡るそうだ。しかし私はそんなことを考えて売ろうとしていたわけではない。

10数年越しに再び手に取るまで、何もかも忘れていたのであったし、これらを手放すことで、次に忘れたらもう2度と思い出す機会はないだろうと思った。

絵本は開かなかった。ページ1枚たりとも開かず箱に詰めた。理由はわからない。ただ、今ここに積まれた本どもを、どうせ忘れてしまっていたような感傷に乗せられて開いたら、私はこの件について一生立ち止まることになるような気がしたのである

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