2016-01-13

白い道

めちゃくちゃに荒らされた部屋。ちゃんと殺してあげるからと話している男。何も考えられずにただ、聞いている自分がいる。

のしんと冷えた空気と、白い月。車のボンネットに白く光っている霜。暗闇の中に、銀色にまっすぐに伸びている道。私は何も考えていないまま、車に乗せられた。何か話していたのだろうか ・・・ 覚えていない。

車が止まったのは多分どこかの観光地だったのだろう。潮のにおい ・・・ 岩場があるどこか。男の声が聞こえる。「海の水に傷口をつけておくと、血が固まらないからそのまま死ねるよ。血が無くなるから白くなるけど。最初に手首を切るときちょっとピリッとするだけで、そんなに痛みはないから

私は何を聞いているのだろう? その男は何を言っているのだろう?

手をつかまれて海に続いている崖の道に向かったら、釣りをしていた人達が登ってきた。「下は荒れているから駄目だよ。危ないから行っちゃだめだ。」 すれ違って後ろを振り返ると、何かの建物から若い女性が出てきて、こちらをみていた。男は舌うちをして私を車に連れ戻し、車はまた走り出した。

私は自分が何かを話した記憶が無い。

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