当該タイム中のA部長に、へぇと媚びた笑顔を浮かべながら曖昧な返事を返す私社員はさながら処世術を心得た虎眼先生の如くであった。
「私社員さんは私のことを全然かばってくれないんですね。C元社員さんもそうでした、私の方はフォローしていたのに。いつ私がぶち切れて刺し殺すかわかりませんね、おお怖い怖い。」
激昂したふうでもなくしかし目線は決して合わすことなく淡々と詰られた。
ところでC元社員は失踪した後、私社員とは幾度か連絡を取りあったが、A部長とB社員には決して居所を知られぬよう細心の注意を払っていた。事の元凶はこの二人であると考えていたからだ。
問題は刺し殺されるのは誰かということで、これをA部長と断ずるのは楽観的に過ぎるのではないか。
退職の日は近い。