女の顔を殴ろう。
握り拳をいきなり、力いっぱいめりこませて、よろめいたところをもうひとつ殴ろう。
女が地べたに崩れ落ちたら、馬乗りになって殴ろう。
鼻がぐしゃりと潰れ、血しぶきが散っても、開いた口から白い歯が飛び散っても、けっして手を休めてはいけない。
女が顔を背けたら、反対側から殴ろう。
髪の毛をわしづかみにして、目の玉がしっかり潰れるように、くりかえし、くりかえし殴ろう。
全体重をかけて、頬を突き破るつもりで殴ろう。
鼻血で顔が真っ赤になっても、目や唇の端からおかしな液がにじみ出てきても、けっして手を休めてはいけない。
伏した女が動かなくなったら、髪の毛をつかんで引き上げ、正面から眺めよう。
鼻はひしゃげ、半開きの口から見える歯は欠け、唇は不揃いなたらこのように腫れ、目の横へ不気味に角張った肉の突起ができた、女の顔。
もはや顔と呼べないほどにひしゃげて、血にまみれた肉の塊になっていたとしても、それはやはり顔だ。
腫れ上がった頬のせいでもはや完全には開かない目は涙ぐんで、うつろに天を仰ぐ。
口を開けたまま血を滴らせて、恍惚にひたっているのか、激しい性交の後に全身の震えが通り過ぎるを待っているのか、犯したことを思い出せない罪を悔いているのか、もはやわからない顔。
このときになってはじめて、獣のようなひたむきさで、ほとばしる力のおもむくままに女の顔を殴り続けた理由がわかる。
顔をたたき壊すことで、女が女であることを打ち砕くことで、女とは全く別の生き物が、肉の塊になったグロテスクな何かが現れるのが見たかった。
女が女であることを目いっぱいぶち抜くことで、女を脱ぎ捨てた新しい女が、性交で絶頂に達したときの恍惚に似た何かから露出してくるのが見たかった。
そのようにして、女を憎み、憎むことでよりいっそう愛したかったのだ。