2024-04-07

顔踏み女の怪

俺が通っていた高校で、「毎年修学旅行で、旅館に泊まった生徒数人が、必ず謎の女に顔を踏まれる」という意味がわからない怪談があった。

まりにも略脈がなく、意味オチもない話なので、この話が出ても特に盛り上がるわけでもなく、なんとなく「顔踏み女がでるらしいよ」ということが知られていた。

こういう話のテンプレートとして、いわく付きの旅館に毎年泊まっているとか、あるいは踏まれた生徒が不幸になるだとか、そういう話があってもおかしくないとは思うのだが、しかし全くない。

そもそも修学旅行の行き先は毎年変わるし、踏まれた生徒も死んだとかいう話はなかったのだ。

当時、俺は怪談好きだったので、直接的に顔を踏まれた先輩を探し出して話を聞くことにした。

その先輩によると、旅館荷物を置いたときに、ふと天井を見ると、「空間に貼り付けたような、騙し絵のようなペラペラの女らしきもの」が顔を踏んだ、と話していた。

他にも数人が違うシチュエーションで同じようなこと経験をしていたが、強く共通するのは「空間に貼り付けたような」という点だった。

わかりやすくいうと、ホログラムみたいな存在らしい。

俺が注目したのは「なぜ女だとわかるのか」ということだが、例えば赤いワンピースを着ていただとか細かったとかそういうことを言う人は1人もおらず、具体的な姿の詳細に突っ込んでも「わからない。でも女に違いない」と帰ってくる。

特にダイナミックな展開があるわけでもなかったので、俺は早々に興味を失って、修学旅行に行ったのだが、やはり俺のクラスメイト数人が顔を踏まれたと話していた。

それからそういう事をほとんど忘れて、会社に入ったぐらいの頃、「うちの会社残業をしていると、窓の外に人のようなものが浮かんでいることがある」という話を耳にした。

喫煙所(今はもう撤去された)で上司世間話していると、その上司をそれを見たようで、例の如く姿を詳しく聞いてみると「よくわからないが、空間に貼り付けたような、立体感があるのかどうかよくわからない、黒い人のような影」と言っていた。

どうも幽霊ペラペラらしい。

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