ビッグバンを模式するために使われる風船のたとえをもって「全てが中心だ」と言い張る人がいる。
膨張の基点は風船のゴム膜の中にではなくそれによって包まれている空気に満たされた空間の内部に一点だけ見出すのがまっとうな考えだろう。
たとえばこの宇宙が三次元多様体の膜のようなものだと仮定するならその中心は四次元以上の座標系のある一点から放射状に膜が広がっていったと見ることができるだろう。
宇宙の全ての点で点同士が離れあっているというのはいわばコリオリみたいな見かけの現象だ。
高次元の真空のゆらぎから宇宙の構成する一点ができたという仮説に基づくなら、その宇宙の一点が三次元に収まっているのあえていうなら最初の瞬間だけであり、それ以降は一点に収まってたものは、各々一点から四次元以上の意味での距離において等距離だけ遠ざかっているということである。見かけ各点同士が遠ざかっているのは、一点に対する離れ方が等距離だからであり、実際の我々は絶えず高次元上の一点からまっすぐにどこかへと移動しているのだ。いきなり真空のゆらぎに無限次元を仮定するのはオッカムの剃刀からしても妥当ではなかろうが、とにかく、最低でも膨張の基点に原点をおいたときその座標を構成する変数のうち4つ以上の変数の絶対値が絶えず増加するような高次元旅行を我々はしているのだと思う。